なぜ立ち消えになってしまうプロジェクトが多いのか? – 連載「プロジェクトとはRPGである」ep.6

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前回の記事で、勇者達はようやくチームワークを身につけてモンスターと戦えるようになりました。しかし、やはり最初は思うようには進みません。主人公ピーターと幼なじみスティーブが冒険に出る前に城下町の衛兵をやっていた頃は、強い武器も防具もあり、同僚の兵士もたくさんいました。

しかし、自分たちでチームを作ってゼロから冒険を始めると、弱い敵を倒して隣の村に到着するのもやっとのことです。

 

実際のプロジェクトやスタートアップでも、計画や承認が終わって実際に歩みを始めるという、この最初の部分でつまづくケースは非常に多く見かけます。

せっかく安定が保証された環境を飛び出して挑戦を始めるのなら、目標は大きく持つ必要がありますが、実際に目標に向かって歩み始めると、「抱いている目標と実際にやっていることのギャップ」に失望を感じ始めるのです。

実は、この部分のマインドセット(考え方)の切り替えがプロジェクトを成功させる上で大きなポイントになるのです。

今回のテーマはプロジェクトやスタートアップの最初に必要な「小さく積み上げる」ことの重要性です。

 

目次

  • なぜ立ち消えになってしまうプロジェクトが多いのか?
  • 小さな積み上げが大きな土台を作っていく

 

 

なぜ立ち消えになってしまうプロジェクトが多いのか?

プロジェクトを始めるには、通常大きな労力を伴います。アイディアを企画書に落とすのも大変ですし、それを関係各所に見せて利害関係を調整するのも大変、そしてそれをさらに実行可能なプランに落とすのも大変、実現できるチームを編成するのも大変なことです。

また、日本の企業では一つのプロジェクトを自発的に始めるにも、決裁、決裁、決裁…と承認をいくつも取らないと始められないことが通常ですので、そこにかかる期間やマネージャークラスへの根回しなどを考えると、「やってられない」と思う人が大多数なのも理解できます。

企業の幹部クラスの人が「ウチの社員は誰も新しいことを始めようとしない」などとボヤいてることがよくありますが、大きな権力を持っていない社員が承認のプロセスをやり遂げるだけでも大変な労力を伴うことなのです。しかも、それをやり遂げたところで、給料や評価が連動してなければ、「言われたことをやっていればいい」と思う人が大半を占めるのは当然のことです。

 

しかし、そんな中でも稀に「新しいことがやりたい」と斬新な企画を承認まで持っていく人がいます。そういう人の頑張りは周囲も見ていますので、「おお、頑張ってるね」と口には出さなくても心で応援していたりするのですが、ある時、肝心のリーダーが歩みを止めてしまうことがあるのです。

「あのプロジェクト、どうなった?」と聞いてみても、いろんな理由をつけて言い訳をしていて、プロジェクトがまだ正式に業務として評価と連動していなかったり他の業務で忙しくなったりすると、上司もなかなかチェックすることができなくなって、いつの間にかプロジェクト自体が立ち消えになったりするのです。

そしてある日、他の企業が同じような構想のサービスを立ち上げて評判を呼んでいたりすると、みんなが微妙な気持ちになって企業内のモチベーションや自信がなくなってしまいます。

(こういうことが繰り返し起こると、「自分たちには新しいものは作れない」という自己イメージを組織内で持ってしまうことにつながります。)

 

せっかくプロジェクトを始めることができたのに、なぜ開始直後に失速してしまうのか?

それは、背景に下記のような心理があるからです。

  • 「やらなければならない膨大な仕事」がもたらす不安
  • 「達成しなければならない大きな目標と実際にやっていること」のギャップがもたらす失望

 

ここに、さらに会社からのプレッシャーなどが加わると、リーダーには一気に焦りも加わって、プロジェクトそのものが危機的な状況に陥ってしまいます。

 

 

小さな積み上げが大きな土台を作っていく

プロジェクト開始当初に訪れる不安と失望、焦りは「プロジェクトに付き物の問題」と言っていいものですが、特に経験が浅いリーダーはそうしたネガティブな感情に囚われて歩みを止めてしまうことがあります。

プロジェクトを何度もやり通して経験を積んでいたり、個人的な突破力を持っている人はこのフェーズを通過できますが、ここで重要なのは、「小さな積み上げが大きな土台を作る」という考え方を持っておくことです。

 

プロジェクト当初は構想や計画しかありませんので、例えば Webサービスを作るとしたら、それを実際にどう作るかという「要件定義」や「仕様書」や「画面設計」などを作成する必要がありますが、それらの作業自体は非常に地道で孤独な作業です。

多くの場合はリーダーがそれらをまとめることになりますが、頭のなかのものを取り出して資料に落としていって、実際に形にするのに必要な詳細部分を関係者に確認したり、まだ決まっていない部分をチームで話し合って決めたりするので、なかなか思うようには作業が進みません。作った資料にダメ出しが入ることもしばしばあります。

しかも、資料自体はサービスそのものとは違うので、それを作ったからといって、サービスの完成度自体はゼロのままです。

 

こうした状況がもたらす不安と失望、焦りに囚われたリーダーは、ここで細かい決めの部分を飛ばして「なんとなく」でプロジェクトを進めようとするのですが、これはこれでうまくいきません。

要件定義や設計というプロジェクトの大事な要素であやふやなところがあると、後で非常に大きな問題(インフラがちゃんと動かない、バグだらけ、納期に間に合わない…など)につながるからです。

(設計図無しでビルを建てることをヤバいと思わない人はいませんが、なぜかソフトウェア業界では設計を飛ばして複雑なサービスやシステムを作ろうとする人がたくさんいるのです。)

 

優れたリーダーとそうでないリーダーの違いは、「孤独でモヤモヤしがちな”決め”の部分をちゃんと作れるかどうか」で決まると言っても過言ではありません。

 

プロジェクト初期の小さな積み上げが、後で大きな土台を作る。そのことを忘れずに着実にプロジェクトを進めることがとても大事です。

そして、そうした小さな積み上げを見ている人は着実にいて、必要なときに力を貸してくれるものです。

 

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Masayoshi Hashimoto

「フロントライン通信」編集長。業務経験は15年を超え、メディアサイトから数千万人規模の会員システムまで、10社で80件以上のプロジェクトのマネジメントを実施。2011年にスタートアップを立ち上げ、多くの人がプロジェクトをより成功できるためのツール「マンモスプロジェクト(Mammoth Project)」を開発。世界中の現場で戦うチームを応援することを人生の使命とする。

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