アイディアは正しく育てよう – 連載「プロジェクトとはRPGである」ep.1

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前回の記事で、主人公は「いつまでも防衛戦を戦っていてもダメだ、ボスである親玉を倒すしかない」というアイディアを元に1つの決意を下しました。

あらゆる挑戦も、最初は1つのアイディアに過ぎません。iPhone も Google も、最初は1つのアイディアです。

そのアイディアを現実に変えて大きくしていくには、正しく育てる必要があります。

 

では、どうやって育てればいいのか。

今回のテーマは「アイディアの育て方」です。

 

目次

 

アイディア自体には大した価値がない

世の中には、アイディアを過剰評価する傾向があります。「世の中にはものすごくIQが高い天才がいて、ある日イナズマのように世の中を変えるアイディアが閃き、そして凄い製品を作ったり論文を書いたりして世の中を変えていく」というような思い込みです。

実際に世の中を変えた科学者や発明家、起業家の伝記などを読むと分かりますが、そんな簡単なものではありません。

アイディアは単に「思いつき」に過ぎず、それを論文やビジネスに変えていくにはとても地味で苦痛に満ちた道のりを歩む必要があります。そして、そうした努力の積み重ねができたからこそ、偉人達は大きな成果を残せたのです。

(ちなみに、『イノベーションの神話』という本はこうしたテーマを分かりやすく分析していてオススメです。)

 

あなたの周りにはこんな人はいませんか?

  • 思いつきばかりを口にして「自分の賢さ」を主張する割には、自分自身では何も実行せず結果も残せない人
  • 誰かがやったことを見て、「ほれ見ろ! 俺は正しかった!! 俺は◯年前から同じことを言ってたんだ!!」と騒ぐ人
  • 「あいつは俺のアイディアを盗んだ!」などと言って大騒ぎしている人
  • アメリカなど自分がよく知らないところから出てきたアイディアは過剰評価する一方で、身近な人のアイディアは”けちょんけちょん”にけなす人

こういう人達は、アイディアを過剰評価していて、物事を実際に達成することの重要性を理解していません。また、頭のどこかでは物事を実行する勇気や自信が無いのを知っていて、それを持っている人を嫉妬しています。

残念ながらそういう人は世の中に結構多いので(笑)、もしあなたが実行したいアイディアを持っているなら、ちゃんとそうした人達から守りながら育てていかなければなりません。

一番難しいポイントは「批判とのつきあい方」です。

 

「批判」とのつきあい方

日本では平等性や公平性がとても重視されているため、「人の意見を聴くこと」はとても大切なことだとされています。「お前は人の話を聴かないな」と言われたら、普通は注意されていると思うでしょう。

 

確かに人の話に耳を傾けることはとても大事なことですが、アイディアを育てるときには注意して聴く必要があります

生まれたてのアイディアというのは産みたての玉子のようなもので、大切に持って温めていかないと、あっという間に割れてしまったり冷えて死んでしまったりするからです。

そしてアイディアにとって、実は現代の日本はかなり過酷な環境なのです。

 

現代の日本では、製品でもサービスでも極めて高いレベルのものが非常に安価で手に入ります。マスメディアは企業や芸能人の揚げ足取りを「報道」し、ネットでもちょっとしたミスや失敗をこぞって叩きます。

確かにマスメディアやネットでバッシングされる企業や人の失敗への批判は「正論」も多いのですが、それは消費者や野次馬の目線であって、物事を実行する「当事者」の目線ではありません

マスコミやネットで辛辣な意見を吐いて他人を叩く人は、その人の失敗の結果を負うわけではないのです。そして、当事者の目線というのは、今の日本では学校でも企業でもなかなか学ぶことができません。

(なかなか学べないということは、数で戦えば当事者の目線よりも消費者や野次馬の目線が勝ってしまうということで、合議制が一般的な日本企業で新しいことができない理由はこうした事情が背景にあります。また、上で挙げたような「口だけで何もできない人」は、消費者や野次馬の目線しか持っていないのでそうなってしまっているのです。)

アイディアを元に物事を実行する際は、この「目線の違い」を明確に意識する必要があります。

 

ただ一方で、アイディアには良し悪しがあって、批判はちゃんと聴きながら、良いところは伸ばして悪いところは修正していく必要もあります。最近はあまり見かけなくなりましたが、「自分のアイディアはいい」と一人で思い込んで、人の話を聴かずに他人を傷つけるアイディアを世の中に出してしまい、大失敗するケースもあったりします。

ビジネスの場合は投資の回収どころか悪評を買ってしまうことになるので、事前に避けるのが懸命です。

 

誰の意見をちゃんと聴くべきか。このあたりのバランスが難しいのですが、ポイントとなるのはやはり「意見をくれる人に当事者感があるかどうか」です。

  • その人が自分の経験に基づいて言っているのかどうか。
  • どこかで聞きかじった情報をそのまま振り回していないか。
  • 自分がどんな選択をしても、継続して意見をくれるかどうか。
  • テレビのコメンテーターのように無責任な意見を言って悦に入っていないかどうか。

要は「親身になって話してくれるかどうか」ですが、このあたりを考えながら人の意見を聴くとよいでしょう。

 

信頼できる人に話してみよう

アイディアの「殻」は玉子と同じように、最初はとても脆いものです。ちょっとした愛のない批判でも真に受けてしまうと、たちどころに割れてしまいます。アイディアを思いついた当人に自信がない場合は、他人の一言で「やっぱりやめよう」となってしまうこともあります。

アイディアの良し悪しと思いついた本人の自信は別のものなので、そんなことで失ってしまうのはとても勿体無いことです。

 

しかし、アイディアを大きくするには温めて育てていかなければなりません。また、アイディアを本当に現実にしたければ、いつかは誰かに話さなければなりません。ほとんどのアイディアは自分以外の人の手を借りて温めていかなければヒヨコとして孵化させることはできないのです

そこで、アイディアを思いついたばかりで「殻」が薄いうちは、自分が信頼できそうだと思える相手に相談してみるとよいでしょう。自分が大切にしているアイディアを人に話すのは勇気がいることですが、案外、人は当人が本気で実行する気がありそうなら、どんなアイディアでも親身に聴いてくれるものです。

 

相談する相手はアイディアに関連する分野に詳しい人が適切ですが、それよりも「一緒に考えてくれる相手」かどうかが重要です。最初は少数の信頼できる相手に話してみて、アイディアを温めて育てていけば、そのうち殻が厚くなってどんな意見でも受け入れることができるようになります。

相談できる相手は、友達かもしれませんし、恋人や家族かもしれませんし、同僚かもしれませんし、上司かもしれませんし、部下かもしれません。はたまた、パーティーやオフ会、SNSで知り合ったばかりの相手だったりすることもあります(私はこの全てのパターンを経験しています)。

信頼できる相手は直観でピンと来るものなので、その直観を信じてみるといいでしょう。

もし間違った相手だったら、また新しい相手を探せばいいのです。

 

そして、この相談した相手がアイディアを実現するときの「仲間」になってくれることもあるのです。

 

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Masayoshi Hashimoto

「フロントライン通信」編集長。業務経験は15年を超え、メディアサイトから数千万人規模の会員システムまで、10社で80件以上のプロジェクトのマネジメントを実施。2011年にスタートアップを立ち上げ、多くの人がプロジェクトをより成功できるためのツール「マンモスプロジェクト(Mammoth Project)」を開発。世界中の現場で戦うチームを応援することを人生の使命とする。

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