起業後の「死の谷」を4年間生き延びて資金調達をする方法

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今回、ずっと作り続けてきたサービスをようやく広く試してもらえるレベルまで持ってくることができ、またベンチャーキャピタル4社から資金調達をすることができて、スタートアップとして次のフェーズに進むことができるようになりました。

関係者の皆様、いつも応援してくださっている皆様には本当に感謝の気持ちで一杯です。

 

システム開発から結婚式の準備、おせち料理まで。誰でも簡単にウェブブラウザ上でプロジェクト管理ができる「マンモスチームワーク」の正式版をリリース

http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000016785.html

 

極めて貧弱な存在であるスタートアップにとって、資金調達は大きな目標の一つですが、それは簡単なことではありません。特に、弊社の場合はエクセルシート一枚のアイディアからビジネス向けのオリジナルサービスを作ってきたこともあって、かなり苦労しました。

 

もし、これからスタートアップをやりたい人がいたら参考になるかもしれないので、自分たちの4年間の道のりを振り返って学んだことをご紹介したいと思います。

 

起業したら「レベル1の勇者」からスタート

起業する人は多かれ少なかれ自信家でしょう

その自信に根拠があるケースも、ないケースもあると思います。

 

自信は起業家にとって生命線のようなものなので、どっちの場合でも自信があることはいいことです。

 

ただ、スタートアップをやっていると、その自信は簡単に打ち砕かれます。

それも、毎日のように。

 

スタートアップ起業家が口を揃えて言うのは「こんなにしんどいとは思わなかった!」ですが、どれだけ事前に予想していてもその予想を遥かに裏切る苛酷さが待っています。

自分の場合は、予想の1万倍はしんどかった、と思っています(笑)。

 

アメリカの調査ではスタートアップの起業家の約半数がメンタルのトラブルを抱えていたそうです。

それぐらい、スタートアップをやるのは「メンタルに来る」ことなのです。

 

個人的なエピソードとしては、起業がきっかけで離婚を経験したり(今はお互い別のパートナーと再婚して幸せに暮らしています)、1日の食費200円という生活を1年やって、1ヶ月間寝込んだりしました。

フリーランスとの兼業で一日の睡眠が3-4時間という日々を何年もやったり、自分の生活費を稼ぐために工事現場の警備員のバイトを1年間やったりもしました。旅行は6年間行けませんでした。丸一日休める日は今でも年に数日です。

全て必要な選択の結果で自分で納得していますが、こうした苦労は起業前には全く読めなかったことです。

 

スタートアップは基本的に自分たちでサービスを作って、出資や売上でそのサービスをどんどん大きくしていくというビジネスですが、サービスがちゃんと商品になるには多くの時間と試行錯誤が必要になります。

特に、ゼロからオリジナルなサービスを作ってビジネスにしようと思うと、パクる模倣するものが無いので、その時間と試行錯誤の回数は飛躍的に増えます。

弊社の場合は、エクセルで作った一枚のシートがアイディアのベースだったので、数百、数千に上る細かい試行錯誤を積み上げる必要がありました。

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(サービスの原型となったエクセルの図です。プロジェクトマネジメントで極めて重要な要素である「クリティカルパス=タスク同士の繋がり」を可視化できるWebサービスを作る」というのが起業当初の目的でした)

よく「Webサービスやアプリは立ち上げに資本が少なくて済む」みたいなことを言う人がいますが、それはヒットアプリ1本でビジネスを伸ばせた、せいぜい数年前までの話です。

今は数十億、数百億円、数千億円という資本を持ったアメリカのスタートアップや国際的な大企業のサービスを一般的なユーザが使うことが当たり前になっていますので、求められるサービスのレベルも日々グングン上がっています。

オリジナリティに乏しいサービスは、大資本の企業にパクられてしまうと、それだけで大きなプレッシャーになります。

オリジナリティを確保しつつ、サービスとして「当たり前のレベル」に持って行くまでの人件費やサーバ代を計算してみると、とても「少ない資本」だとは言えない規模になることがわかるでしょう(もちろん、それでも設備投資がほとんどいらないので他の産業よりは始める時の資本は少なくて済むのですが)。

 

スタートアップは、「まず戦えるサービスを作り上げる」まで生き残ることが極めて難しいのです。

アメリカのスタートアップ業界ではこれを「死の谷」と言い、92%のスタートアップが3年以内に死亡すると言われています(日本は創業期を支える機関や投資家が少なく、生活コストも高いので、もっと多いかもしれません)。

 

サラリーマンを辞めて起業した後の状態をRPGで喩えて言うと、(どんなにサラリーマンとして優れた人材であっても)スタートアップを始めたら勇者のレベル1からやり直し、みたいな感じです。

どれだけ勇者として世界を救うつもりでも、実際に冒険を始めた当初はお城の衛兵よりも圧倒的に弱い存在になるのです。

その「圧倒的に弱い自分」を見つめつつ、それでもどうにかモノになるまで冒険を続けて少しずつでも強くなっていけるかどうかは、やはり自分たちが実現するビジョンやミッションを本当に信じていけるかが重要になるのです。

 

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受託か兼業か、それが問題だ

ビジョンやミッションを信じること、つまり「信念」が幾多の障害を乗り越える上で一番重要なのですが、かと言って信念でメシを食えるわけではありません

人は生きていくだけでお金がかかります(特に東京では!)。ビジネスの基盤となるWebサービスやアプリを作るには最低でも企画と開発とデザインができる人が必要になります。サーバ代、通信費、仕事する場所のお金も必要になるでしょう。

よくアメリカでは「ガレージで生まれたビッグサービス(つまり場所代が要らないからアイディアと努力だけで成功できた!)」みたいなストーリーがありますが、東京では車庫は金持ちだけが持てる特別な資産なのです!(笑)

 

信用があり運が良ければ、起業直後に個人からの出資や助成制度などの借入を受けることもできますが、ビジネスの成功を証明するためのサービスを作っていくまでにはおそらく足りないでしょう(この時点で経営陣以外から多額の出資を受けたりすると、株主比率の関係で後に成長の枷になるというリスクもあります)。

 

ビジネスとして勝負できるサービスを作っていくために必要な資金をどうやって作るか。

その際の選択肢として、受託か兼業かという2択があります。

 

もちろん、世の中にはアイディアレベルからVCがポンポン出資してくれたとか、金持ちのパトロンがサポートしてくれたみたいな話もありますが、それは完全に個人の運で真似できるものではないので、戦術の選択肢としては期待できないでしょう。

アメリカのケースでは、アイディアレベルでVCから出資を受けられるスタートアップは0.5%-1%だと言われています。たぶん、日本でも状況は変わらないと思います(企画書で夢を語るのは、実際にサービスを作ったりビジネスとして成功させることと比べると遥かに簡単なことなのです)。

 

そこで、お金を稼ぐために受託か兼業かを選択する必要が出てきますが、それぞれのメリットデメリットは、下記のようになります。

 

受託

◯ メリット

良いクライアントから継続的に受注できれば比較的早期に会社を安定させることができる

・「良い案件を受注できれば」余剰の開発力を自社サービスに回すことができる

✕ デメリット

・全てはクライアントにかかっている

・受託と自社サービス開発のノウハウやマインドセットは大きく異なるため、体制の切り替えが難しい

 

兼業

◯ メリット

・「会社の目的」を見失わない

・人件費の支出による短期的な「企業としての破綻」を回避できる

・今のところ「プロ人材」は売り手市場(経験とスキルがあればフリーランスでも高い報酬が得られます)

✕ デメリット

・全員が一人称でプロとして仕事ができるレベルである必要がある

・リーダーに求められるプロジェクトマネジメントのスキルが極めて高い

 

こうして見ると、受託も兼業もどちらも「他の企業や人が食べるために一生懸命やっていることのプラスα」を何年もやらないといけないわけで、スタートアップとしてやっていくには大変であることには変わりがありません。

弊社の場合は、最初に受託方向に向かったものの、受発注で想定外のトラブルがいくつかあり(私がヌルかったのが最大の原因です)、受託事業の難しさを痛感して「本当に自分たちでやるべきこと」に注力するために兼業に切り替えたという経緯があります。

ちなみに、起業するまで大企業にいたため知らなかったのですが、こうした案件の受発注のトラブルは非常に多いです。これから起業する方は収入の月ずれや案件受注の見込みのずれは会社の存続に関わる致命的なミスに繋がるので、本当に気をつけてください

 

今は受託事業も低価格化と高度化が進んでいるので、昔みたいに「簡単なウェブサイトを作って数百万円」という世界ではなくなっています。

受託事業を成立させるには、良いクライアントと関係を作って、利益が確保できる良い案件を継続的に受注して正確に回していく必要があり、そのノウハウを組織として獲得するにはやはり数年間は必要です。

また、受託で食べていけるようになると安心してしまうのが人情というもので、わざわざ新たなリスクを冒して自社サービスで勝負しようというマインドを維持するのが難しくなる場合もあります。こうなると、「なぜ自分たちは起業したのか」という目的を見失うことにもなりかねません(もちろん、自分たちが受託事業に満足している場合はいいのですが)。

 

兼業の場合は、自社サービスの開発だけでメンバーが結びついているので、会社の目的がブレないという大きなメリットがあるのですが、メンバーは他の仕事をやりながら時間を割いて自社サービスの開発に当たる必要があります。

メンバーには十分な報酬を支払えない分、株式や将来的な報酬で報いるという「約束」を元にプロジェクトを続けるわけですが、食っていくために稼ぐのが大変なのは兼業も同じで、各自で参加する現場によっては、自社サービスに割く時間を十分に確保できないメンバーが出てくることもあります。

こうした思うように進まない状況ではリーダー(社長)にかかる心理的・金銭的なプレッシャーはかなり強く、またプロジェクトの停滞をカバーするためのマネジメントも極めて高いレベルのものが要求されます

 

受託と兼業、どちらもメリットデメリットがあり、どちらがベターかは結局のところ自分たちがどういうチームなのかという「人」によって決まります。そしてここでも、「自分たちは何のために集まって起業したのか」というビジョンとミッションが重要になってくるのです。

 

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結局、一番大事なのは「人」

IT系のスタートアップは、設備投資が少なく済み、世界市場を狙って素早く大きく成長できる点が本質的な特長です。

Webサービスを作っているけど営業が売らないと売れないビジネス、つまり営業費用と売上が比例している企業は急速な事業拡大が難しいので、スタートアップとは言われません(日本では新興勢力的な意味合いで「ベンチャー」と呼ばれることが多いです)。

 

Webサービスなどのテクノロジーは一見、非人間的に見えますが、実際のところ作っているのは生身の人間なので、誰がどう作っているかがサービスにも表れます。

私自身、会社員とフリーランスで多くのプロジェクトに関わってきましたが、数字的に利益が上がっているプロジェクトでも「中の人」が大きな負担で不幸せになっているプロジェクトは長続きせず、ユーザも付いてきません

もちろん仕事なので仲良しこよしではうまく行きませんが、お互いの専門性や人生的なバックグラウンドを尊重できるチームがよいパフォーマンスを発揮できてこそ、サービスやビジネスも形になっていくのです。

 

スタートアップはとにかく物事が思うようにうまく行きません。会社員時代には当たり前だったサービスクオリティや納期を守ることが困難で、目指すビジョンと自分たちのいるところはあまりにもギャップがあります。

VCや大企業との交渉も、失敗することのほうが圧倒的に多いです。社会的な信用もゼロに近いので、ITやスタートアップのことをよく知らない人から差別的な扱いを受けることもあります(「IT起業家=ホリエモン」というイメージの人は今でも日本中にたくさんいます)。

月々のお金のことを心配しながらこうした失敗の中で試行錯誤を続けていけるのは、希望を信じて少しずつでも物事を積み上げていける仲間や、応援してくれる人々がいるからこそです。

そして、物事を積み上げていく中で、縁がある人に助けてもらって、前に進むことができるのです。

 

 

シェアオフィスやコワーキングスペースにいると、半年一年でよく顔を見る人がどんどん変わっていきます。チャンスを掴んで出て行く人は稀で、ほとんどは失敗の連続で心が折れてやめてしまったり、仲間割れでチームが崩壊して離脱していきます。

4年間の過酷なシード時代を生き抜いてきて学んだ一番大事なことは、チームや応援してくれる人をとことん信用すること、そして代表としてその信頼に応える努力を最大限すること、でした。

たまに自分のビジョンや目の前のお金に酔って自我が肥大しておかしくなってしまう人がいますが、結局、中長期的には人が離れてしまってビジネスも崩壊してしまいます。

 

そして、想像以上に長く続く試練の道を耐えるだけのストレス耐性を得るためには、やはり身体が資本です。

健全な思考と精神を保つために、適切な食事と運動と睡眠を忘れないようにしましょう(私は一番ストレスの多い頃に1年で1000km走ったりしました)。

 

「4年間シードを生き延びて資金調達をする方法」と銘打った割に、「継続は力なり」とか「人を大切にしよう」という精神的な話になってしまって恐縮なのですが、自分でスタートアップをやってきて、そして会社員時代と兼業でたくさんの企業を見てきて気づいたのは、こうした精神的な部分がズレていると後で修正が効かないという現実なのでした。

もちろんテクニック的な話はたくさんあるのですが、そういうのは試行錯誤の中で学んでいけばいいことなのです(そのあたりはまた別の記事でご紹介します)。

 

とりあえず、こちらからは以上です。

 

Masayoshi Hashimoto

「フロントライン通信」編集長。業務経験は15年を超え、メディアサイトから数千万人規模の会員システムまで、10社で80件以上のプロジェクトのマネジメントを実施。2011年にスタートアップを立ち上げ、多くの人がプロジェクトをより成功できるためのツール「マンモスプロジェクト(Mammoth Project)」を開発。世界中の現場で戦うチームを応援することを人生の使命とする。

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3 Responses

  1. ふーじー より:

    昔の記事にコメントすいません。
    大企業を辞めて一人で起業のために準備をしている段階ですが、いろいろ身につまされるものがあり、参考になりました。
    本当にメンタルとの闘いだなあと思っています。

  2. 橋本将功 より:

    ふーじーさん、コメントありがとうございます!
    本当にメンタルは大事なので、上手く行っても行かなくても、食事と運動とストレス解消だけは忘れないようにオススメします。

    もし悩むことがあったら、いつでも相談してください。

  3. よざくら より:

    独立してやっと2年経ったものです。こちらの記事を拝見し大いに共感しました。

    まさに収入の月ズレで何回も死にそうになりました。何よりメンタルが強くなりますね。
    やはり体は皆壊すんですね。自分も今ちょうどキテいるところです。

    食事と運動と睡眠、気をつけたいと思います。ありがとうございました。

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