「働かない人」がプロジェクトに入ってきたらどうするべきか

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はてなブックマークを眺めていたら、とある企業の元社長が事業失敗の理由を、特定の個人のせいにしている記事を見かけました。

記事はここには掲載しませんが、別の立場からの反論異論もあるようで、ある意味で失敗プロジェクトの典型のように思えました。

起業に限らず、ITのプロジェクトでも、業務と担当者のアンマッチでプロジェクトが失敗することは日常茶飯事だからです。

 

ちなみに、シリコンバレーの場合、VCに出資を受けたスタートアップの65%が経営陣の人間関係が原因でうまくいかなくなっていると言われています(映画「ソーシャルネットワーク」もそんなお話でしたね)。

 

実際、私自身が見てきたスタートアップやシステム開発のプロジェクトの失敗の大半は「仲間割れ」が原因でした(表面的にいろんな理由が付けられることもありますが)。

仲間と協力してゼロから物事を作り上げるプロジェクトでは、やはり人間関係が極めて重要な成功の要素になるのです。

 

悲惨な場合は、上で触れた例のように、プロジェクトが失敗した上にお互いが失敗の原因をなすりつけ合って人間同士も傷つけあって終わるケースもあります。

せっかく夢を実現するために始めたのに、これでは何もいいことはないですね。

 

人はそれぞれ自分の正義を持って生きているものなので、プロジェクトが失敗した時に当事者の言い分だけを聞いても問題の所在は分からないことが多く、詳細な業務分析を行わないとその後の対処や予防施策を立てることも難しいのが現実です。

しかし、失敗したプロジェクトを適切に分析できる余裕を持っている企業は稀ですし、日本では「ケンカ両成敗」の文化のせいか、問題が発覚しても適切に対処されるケースはほとんど見かけません

(部下の衝突が人事評価で「失点」になる組織では、マネージャーは人間関係の問題を見て見ぬ振りをすることも多いのです。)

 

プロジェクトで人間関係がこじれたとき、多くの場合は立場の弱い人が責任がなすり付けられて「悪者」にされて終わることがほとんどです

そして、立場の強いほうも問題の所在が理解できないのでプロジェクトの進め方や組織的な改善ができず、人が離れていって中長期的には組織が空洞化してしまいます。

 

しかし、人間関係のトラブルは起業やプロジェクトにおいて一般的なリスクであるにも関わらず、対処法が認識されていないのもおかしな話です。

「よくある失敗」なら、再現性は高いはずです。再現性が高い問題は、予防や打開する施策を立てることも可能でしょう。

また、上で書いたように人間関係のトラブルはプロジェクトの進め方や組織的な問題点を示すサインでもあるので、改善できれば組織力を高めるチャンスにもなります。

 

そこで、今回は私がこれまでの経験で得てきた「プロジェクトの人間関係問題の傾向と対策」をシェアしたいと思います。

 

人はなぜプロジェクトで揉めるのか

そもそも、人はなぜプロジェクトで揉めるのか?

仕事に限らず恋愛でも家族でも、人と人が揉めるときはその原因のほとんどが「期待と現実のズレ」にあります。

 

「街角でいきなり変な人に殴られる」みたいな貰い事故的な出来事も世の中にはありますが、継続的に関係性が生じている以上はお互いがその関係性で何かを得たいと思って続けているわけで、そこには当事者達の「期待」があります。

恋愛ならハッピーな生活でしょうし、家族ならそれぞれの生活の向上でしょうし、仕事なら日々の業務を通じたやり甲斐や金銭的な利益があります。

 

仕事の場合は基本的に「業務を管理する側」(会社やプロジェクトリーダー)と「業務を遂行する側」(担当者やプロジェクトメンバー)に分かれているので、期待するものが違うというのが大きなポイントです。

 

例えば、業務を管理する側としては、下記のような不満をよく聞きます。

「破格の待遇で迎えたのにプロジェクトに貢献していない」

「他にできる人がいないのに仕事をしてくれない」

「アウトプットが期待通りに出てこない」

 

逆に、業務を遂行する側としては、下記のような不満をよく聞きます。

「自分は貢献しているのに期待通りの報酬が得られない」

「思った通りの評価が得られない」

「やりたい仕事ができない」

 

業務を管理する側と遂行する側は期待しているものが違うので、現実が期待とズレた時に衝突が起こりやすいのです。

そして、スタートアップや大規模なシステム開発プロジェクトなどはまず計画通りには進まないので、期待と現実のズレで上のような不満がどんどんチームに溜まってしまいます。

日本人はあまり自分の不満を表明しづらい国民性でもあるので、個人個人が不満を溜め込んである日爆発する、というのもよくあることです。

(スタートアップの社長をやっている立場からすると、業務を管理する側のプレッシャーというのは相当なものなので、おかしくなってしまう人が多いのはよく分かります。これはやってみないとわからないところではありますが。)

 

プロジェクトはこうした不満が溜まりやすい構造がありつつ、しかし実際に「働かない人(成果が出せない人)」がメンバーとして入ってくることもよくあります(企業にもよりますが、自分の感覚では10-30%ぐらいのチームがそうしたケースに当てはまると思います)。

特定の誰かがプロジェクトの足を引っ張っていると、プロジェクト全体が停滞してメンバー全体、そして事業にも影響します。

これに対処するのはリーダーの責任です。

では、どう対処すればいいか。

 

まずお互いの「期待」を確認する

ある人がプロジェクトに貢献できない場合、主に2つの場合に分かれます。

1. そもそも与えられた業務や役割に対して能力が足りない場合

2. 働く本人の期待が業務を管理する側の期待とズレている場合

 

1の場合は、そもそも能力が足りていないので、アサインのミスです。

これは、採用の際によく相手を見ていない時に起こりますが、非常によくあります。

新卒採用は正直言って能力的にはどんぐりの背比べみたいなところがあるので、あまり大きな問題にはなりにくいのですが、IT業界でよく行われる中途採用の世界では、自分の能力や業績に下駄を履かせることが日常茶飯時になっており、また世の中には「嘘つき」もたくさんいますので、「すごい人材だ!」と思って採用したら逆に業務の足かせになった、みたいな事例はしょっちゅう見聞きします。

面接でスキルシートや本人の業績の自己申告を鵜呑みにしない、というのは中途採用の鉄則です。

(有名なWebサービスになると、「あれを作ったのは俺だ!」という人がウジャウジャいたりします笑)

 

ハッタリや下駄を見抜くのに一番いい対策は「本採用の前に一緒に働くこと」ですが、それができない場合は面接で「仕事がうまくいかないときにどういう対処をするか」や「自分が仕事でやった一番大きな失敗は何か」といった、ネガティブなシチュエーションでの経験を訊くことです。

良いことを大きく言うのは簡単ですが、良くないことをリアリティをもって話すことは非常に難しいものです。

また、もちろん仕事は良いことばかりではありませんので、この質問は業務での相手をよく知るという点でもとても優れています。

 

しかし、プロジェクトリーダーとして働いている場合は採用プロセスに関与できないこともあるので、このアサインミスを防げないこともあります。

この場合は、能力が足りないことが判明した時点で、できるだけ早期に本人と人事権があるマネージャーにそのことを伝えて、戦力にならないことを明らかにする必要があります。

 

戦力にならないことが判明しても、組織としての判断でプロジェクトで抱えることになることもありますが、その場合は徳を積むつもりで「教育」モードに切り替えましょう

教育は短期的な利益にはなりませんが、今の日本のIT業界の人材不足は教育を怠ってきたために起こっていることから考えれば、非常に意義の大きいことです。

いつか、自分の教育を受けた人が組織の中核を担うかもしれませんし、世の中を変えるビッグプロジェクトをやり遂げるかもしれません…いや本当に。

また、教育をすることで教える側も学ぶことがたくさんあり、業務上のスキルが上がることもよくあります。

 

 

2の期待がズレている場合も、早期にお互いの期待がズレていることを話し合うことが大事です。

プロジェクトでの人間関係のトラブルのほとんどは、話し合うことを避けて期待がズレたまま不満を溜めるために起こります。

 

「あれ、うまく成果が出てないけど、この人どうしたいのかな」と思ったら、率直にリーダーからお互いの期待について話をすることがとても大事です

なぜリーダーから話すのが重要かと言うと、業務を渡されたメンバーは期待に沿えていないことを実はよく感じていて、負い目に思っていることが多いからです。

 

また、期待がズレている時には不満を感じますが、それを元に感情的に話すのではなく、冷静に「プロジェクト推進の上で問題である」ことを客観的に伝えることも、とても重要です。

実際、感情を脇に置いて話すことは勇気がいることではありますが、話してみれば「実はメンバーはリーダーの見えていない重要な問題に気づいていて、そちらの対処を行うことが重要だと考えている」というようなこともよくあります。

相手は相手の立場でよくプロジェクトのことを考えていた、というわけです。

 

しかし、こうしたプロジェクト改善につながる素晴らしい知見も、感情的なやり取りになってしまえば消えてしまい、不満をさらに蓄積してしまうことにしかなりません。

不満を蓄積させたメンバーは離脱するか、鬱になってしまうかもしれません。

業務上のやり取りで感情的に話すリーダーはそれだけで失格なのです。

 

「スリーアウト制」のススメ

お互いの期待のズレを確認した上で、それでもうまくメンバーのパフォーマンスが出ないこともあります。

その際は、「スリーアウト制」を導入することをオススメします。

 

チームマネジメントを経験していくと理解できますが、一度人を切ったチームや組織はそれが癖になります

何か問題があったら、その問題を個人に帰して辞めさせてしまえばいいからです。

組織やプロジェクトのやり方を変えることはとても大変なことなので、そっちのほうが楽なのです。

 

また、人が辞めさせられることは多くの人にとってはとてもショックな出来事なので、そうしたことが起きると人は萎縮してリスクを取って仕事しなくなります

これも中長期的には組織にとっては大きな損失です。

 

とはいえ、プロジェクトに貢献できないフリーライダー(タダ乗り)の人をいつまでも抱えているわけにはいきません。

特にスタートアップや予算や人数の少ないプロジェクトではそうでしょう。

 

どんなにサボっても頑張っている振りをしていれば他の人と同じように報酬が貰える組織では、メンバーのモチベーションが下がって誰も真面目に仕事をしなくなります

また、働かないメンバーにはプロジェクトの重要な業務を渡すこともできなくなるので、プロジェクト全体、事業全体にネガティブな影響を与えます。

 

本当に期待が一致していて、本人も成果を出すために努力している場合は、「2回までは失敗を許容して、3回目に最後通告を出す」という形にするのが、上記のジレンマを打開するバランスとしてちょうどいいのです。

誰がプロジェクトに貢献していて、誰がそうでないかというのは、一定の期間を一緒に働いていればほぼ共通認識としてリーダー以外のメンバーにも形成されます。

その認識の上で全体の利益のために人をカットする、というのはメンバーにも理解されやすい対応なのです。

(もちろん、プロジェクトへの貢献ができるようになった時点でカウントをリセットする、などは必要です。)

 

恋愛でもうまくいかないときの対応が一番難しいように、プロジェクトもうまくいかない時の対応が難しいものです。

その時は初心に戻って自分の心に聞いてみるといいでしょう。

「このプロジェクトを始めたのは、自分のエゴのために始めたのか、それともみんなの利益のために始めたのか?」

 

その答え次第で、自分がどうするべきかが分かるでしょう。

そして、自分がメンバーの場合は、リーダーがどっちを優先しているかも、よく見るといいでしょう。

 

Masayoshi Hashimoto

「フロントライン通信」編集長。業務経験は15年を超え、メディアサイトから数千万人規模の会員システムまで、10社で80件以上のプロジェクトのマネジメントを実施。2011年にスタートアップを立ち上げ、多くの人がプロジェクトをより成功できるためのツール「マンモスプロジェクト(Mammoth Project)」を開発。世界中の現場で戦うチームを応援することを人生の使命とする。

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