「ずっと第一線で通用する人」は何が違うのか

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私も気づけば今年でIT業界の15年選手になりました。

変化の激しい世界ですが、どうにか生き延びることができました。

 

インターネットの世界が1996年に日本で広まり、2001年ぐらいからADSLの普及によって急速にビジネス化していったことを考えると、かなり初期に業界に参入した層に入ると思います(大学入学時に買ってもらった mac で 28.8k のモデムでテレホーダイしていた時期が懐かしいです…)。

多くのビジネスの隆盛や衰退を見聞きしたり経験したりしてきましたが、似たような経歴の同年代の人といろいろ話していると、いつの間にかキャリアの話になります。

 

同年代で第一線の人たちと言えば、企業の中堅・重役クラスのマネージャー、大きく稼ぐフリーランス、スモールビジネスで起業していたり、私のように「次の産業」を作るべくスタートアップをやっている人と、様々なスタイルの人々がいます。

やっていることはそれぞれ違うのですが、どこか共通点があって、キャリアの話だけで飲みが盛り上がります。

 

参考になるキャリア論と、参考にならないキャリア論

 

かつての「立派な大企業」が大規模なリストラをしたり不正会計をしたりすることがニュースで報じられる一方で、誰も知らなかった企業がいつの間にか大きな売上を上げてテレビCMを流していたりと、「大企業に就職すれば一生安泰」とされていたのどかな昭和の時代と違って、今は変化の激しい時代です。

そんな変化の激しい時代にどうやって稼いで生きていけばいいのか?

これはどんな人にとっても大きな問題です。

 

人々の不安を背景に、ソーシャルメディアや書店でもキャリア論が大流行です。

しかし、芯を捉えた考え方というのはあまり表には出てきません。

 

「よいキャリアを作るためにはアレをやれ、コレをやれ」という話をしている人は、本を書いたり講演したり人材派遣するだけで、自分でそれを実践するわけではありません。

「◯歳までにコレをやれ」という話もたくさんありますが、仮にその方法論が過去に通用したとしても、今後も続くかは分かりません。

 

また、以前はIT業界に「35歳限界説」と呼ばれる説がありましたが、一流の人はそんなことは全く気にしていません。

事実、仕事ができる人は何歳になっても多くの現場で通用しています。

 

「35歳限界説」は、IT業界がまだ若かった時代にそれくらいの年齢でマネジメントに回された人が現場のスキルが落ちた、というレベルの話でしかなかったのです。

 

やはり、有益なキャリアについての知見というのは第一線でやっている人に聞くのが一番です。

では、IT業界やコンサルの戦場を潜り抜けてきた第一線の人たちの経験で共通する点とは何か。

 

「ずっと第一線で通用している人」の考え方

 

「キャリア(career)」という単語は日常的に使われていますが、この言葉の語源をご存知でしょうか。

この単語は元々、馬車などが通った後にできる車輪の跡(轍/わだち)のことを示しています。

つまり、キャリアとは本来、事後的に作られるものであって、あらかじめ計画的に作るものではないのです。

 

これは第一線で通用している人たちの話を聞いていると実感することでもあります。

いつまでも第一線で通用している人たちは、いわゆる「エリート」や「出世コース」とは違って、敷かれたレールを歩いてきた人というのは全く見かけません。

本人も想定していなかった人生のルート変更を経て、目の前のことに専念して、気がついたら第一線でやってこれていた、という人がほとんどです。

 

彼ら彼女らの経歴は本当に様々ですが、共通するのは「仕事に対する考え方」です。

その考え方を要素に落とすと、下記の3つのようになります。

  1. 他人の企業は信用できない
  2. 未来は読めない
  3. 信じられるのは自分の能力と努力と経験だけ

 

ちょっと語弊がある表現もありますし、あまり公言されないことではあるのですが、これはすごく重要な認識でもあるのです。

この記事をもし若い人が読んでいたら、きっと参考になるので詳しくご説明しましょう。

 

1. 他人の企業は信用できない

 

第一線で通用する人は、ほとんどがワーカホリックです。いつも仕事をして、仕事のことを考えています。

年齢を重ねた人の中には手を抜いているように見える人もいますが、それは「手の抜きどころ」を知っているからできることです。

それが見えるようになるには、かなりの仕事量を積む必要があります。

 

彼ら彼女らは、ワーカホリックな経歴の中で、「企業が信用できない」ということを経験でよく知っています。

例えば、下記のような悲惨な出来事を自分で実際に経験しているのです。

  • 何もしない上司にプロジェクトの成功を手柄として持って行かれた
  • 健康や家庭を犠牲にしてまでプロジェクトに貢献したにも関わらず全く評価されなかった(あるいは使い捨てにされた)
  • 働かない社員と全く同じ評価や給与を与え続けられた
  • 権限もないのに上司の代わりに他の企業への謝罪や仲間のクビ切りなどをやらされた

 

こうした状況は企業側にも当然言い分はあり、どちらか一方だけが悪いというケースは少ないですが、関係性というのはどちらかが「裏切られた」と感じると崩壊します。

上記のようなケースはいかに企業側に理由があろうと、それが担当者に伝わってなければ意味がありません。

 

こうした経験で心が折れて潰れてしまう人もたくさんいますが、第一線で通用している人はそうした経験を経ることで、企業とパートナーシップを築くことの重要性をよく理解しているのです。

 

日本では未だに終身雇用制時代の「企業と社員は家族」的な考え方を強く引きずっています。

今でも、新入社員の入社企業との関わり方を見ていると、両親との関係を上司に投影していたりするのを感じます。企業側も、社員を子のように考えて長期的には報いようとしているのかもしれません。

 

しかし、こうした組織観は確かに外部環境の変化が少ない昭和の時代には合う考え方だったかもしれませんが、今のように企業の寿命が短い状況では通用しません。

多くの企業が本当に輝ける期間は約10年程度と、人の仕事人生より遥かに短いのです。

ほとんどの企業は常に激しい競争を生き残るために必死で、社員が思っているほど余裕は無く、社員全員の期待に応えることができなくなっているのです(優秀な人材が抜けてしまう企業は、「事業のために誰を選ぶか」という判断を間違っているケースがほとんどです)。

 

無条件に会社を信じて言われた通りに仕事をするのではなく、有益な労働力と専門性を提供して、企業とパートナーシップを作っていく(そしてそのパートナーシップが崩れたら次の企業と関係を作る)、そのことをよく理解していることがいつまでも第一線で通用し続けるために必要な考え方なのです。

 

2. 未来は読めない

 

IT業界に15年もいると、数年で仕事のトレンドが変わることに気が付きます。

マルチメディア、ユビキタス、Web 2.0、CGM、ソーシャルメディア、マルチデバイス、スマホアプリ、クラウド、ビッグデータ、グロースハック…などなど。

既に死語になっている言葉もあるぐらいです。

 

トレンドの最中はイチイチ経営陣が振り回されて無駄な投資や組織変更(おっと失礼)に向かうため、呆れながらも従うことになるのですが、数年もすれば何もなかったかのようになります。

アメリカからネタを仕入れた胴元だけが儲かる構造を見ていると、「いい加減、日本も社会として学べばいいのに」と思わなくもありませんが、変化の最中は何が次のビジネスに繋がるか分かりづらいので仕方がない側面もあります(誤解のないように言っておくと、トレンドの中で基礎技術として根付いて広がった重要な技術はたくさんあります)。

 

よく分からないトレンドに振り回されたプロジェクトで身を粉にして働いたけど何にもならなかった。

こういう経験を何度かすると、未来を予測することの難しさに気づきます。

そもそも、未来が読めるのであれば投資だけで食っていくことができるので、仕事をする必要もないわけですしね。

 

というわけで、第一線で通用する人は業界のトレンドにイチイチ振り回されないので、一時の流れに入れ込み過ぎて破綻することはありませんし、トレンドの旗振りになって「狼少年」になってしまうこともありません。

 

3. 信じられるのは自分の能力と努力と経験だけ

 

企業も100%信用はできない、トレンドも持って数年。

こういうことを身を持って理解した人がどうなるかというと、目の前の仕事を大切にするようになります。

 

いろんな人といろんなプロジェクトをやってきましたが、ずっと第一線で通用している人は仕事がとても丁寧です

もちろん人によって流儀はいろいろありますし、常にうまくいくとは限らないのですが(そこがプロジェクトの難しいところです)、雑な仕事をする人はどんどん仕事の幅が狭くなって通用しなくなっていきます。

 

特に若いうちは花形とされる職業やプロジェクトに憧れを持ちやすいので、地道な仕事の重要性を理解しづらいのですが、丁寧な仕事ができない人は結局成果を出せないので、中長期的に見るとやはり現場では通用しなくなっていきます(また、IT業界は人の移動が多く情報もすぐに伝わるので、適当な仕事をする人の評判はすぐに伝わっていきます)。

逆に、地道に仕事を重ねて成長している人は、ある日いきなり見る目のあるリーダーに拾われてビッグプロジェクトに呼ばれたりします。

 

変化の激しいIT業界では、年単位で人を見ていくと残酷なくらいこうした差が出てくるので、「因果応報」というのはあるのだなとすごく実感します。

 

ビジネスというのは「顧客に対して価値を提供してその対価を頂く」ことです。

ハデな横文字が流行ったり、目に見えないものを作ったり売ったりして大きな利益を上げるIT業界でも、そこは変わりません(一時的にまやかしで利益を手にする人もたまにいますが、結局何も残らなかったりします)。

 

第一線で通用する人はあまり雑音に囚われず、自分の専門性を磨くことや目の前の仕事、仕事で関わる人を大切にすることを最も重視しているのです

最先端の業界でも物事の基礎というのは変わらないんだな、というのを15年経って改めて思います。

 

Masayoshi Hashimoto

「フロントライン通信」編集長。業務経験は15年を超え、メディアサイトから数千万人規模の会員システムまで、10社で80件以上のプロジェクトのマネジメントを実施。2011年にスタートアップを立ち上げ、多くの人がプロジェクトをより成功できるためのツール「マンモスプロジェクト(Mammoth Project)」を開発。世界中の現場で戦うチームを応援することを人生の使命とする。

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