「勝てるチーム」を作るために必要な人材とは?

shutterstock_210536323

 

前回、「良いリーダーとダメなリーダーの見分け方」について書いたところ、今度は同じ友人から「じゃあ良いメンバーの見分け方は何?」と訊かれました。

彼はリーダー選びでも、メンバー選びでも悩んでいます。気持ちはよく分かります。

 

多くのチーム作りに関わった経験から言うと、年齢も性別も学歴も職歴もスキルシートも、ハッキリ言ってほとんど参考になりません。

 

そして、プロジェクトにおいてメンバー選びはリーダーの質と同じくらい重要な要素です。

 

プロジェクトというのはある意味で戦いですので、「どのプロジェクトを成功させるのか」という戦場選びが決まったら、今度はその戦いに「勝つためのチーム」を作らなくてはなりません。

どんなによいアイディアや資金があって、よいリーダーがいても、一緒に戦えるメンバーがいなければプロジェクトは成功できないのです。

 

しかし、私とその友人がいるIT・Web業界では、今のところ売り手市場(どこも人手不足)であることもあって、人材の質は非常にバラバラです。

また、情報を扱う仕事であるため、履歴書やスキルシートではその人の能力は分かりづらいという点もあります(そして、経歴やスキルを「盛る」人もたくさんいます)。

 

人手が足りないからといって変な人をプロジェクトに入れてしまうと、業務が混乱して、事態の収拾に余分な労力がかかってしまいます。そして、多くの場合、混乱の収拾にはチームで最も優秀な人が充てられます。

つまり、人手不足の時よりも悪い状態になってしまうのです。

 

IT業界ではよく「人月(月一人あたりコスト)」で見積りを立てますが、それはあくまでも費用の見積りであって、プロジェクトを推進する際に「実際に必要なメンバーの数」とは違うのです。

例えば、A,B,C,D の優秀な4人で組んだチームのほうが、E,F,G,H,I,J,K,L の8人のチームよりもプロジェクトをたくさん成功させられる、ということは普通にあります。

 

なので、目的が「プロジェクトをやること」ではなく「プロジェクトを成功させること」にあるのであれば、メンバーの質はちゃんと見極めなくてはなりません。

しかし、多くの企業が採用で悩んでいるように、「人を選ぶ」というのはそれ自体が高度なスキルです。

「人を見る目」という素質に加えて、採用の成功と失敗、そして採用後のマネジメントをたくさん経験しないと一定のポイントが理解できないのです。

 

そこで、今回はどんな人を選べばいいかというポイントをご紹介しましょう。

 

「良い人材」とは

良い人材とは何か、というのは非常に難しいテーマです。

そもそも、何が「良い」のかという価値基準が共有されているようでされていません。

 

「良い人材」とは、「誰かからの評価が高い(有名な人)」ということなのか、「学歴がいい」ということなのか、「高度な技術を持っている」ということなのか、実は人によってマチマチです。

最近は「地頭がいい」という謎の単語が出てきたりもしますが、では「地頭とは何なのか?」と訊いてみると、やはり人によって答えはマチマチです。

多くの企業でこうした基準がブレていて、採用の際に混乱を来しています。

 

例えば、新卒採用の際には学歴でフィルタリングしているのに、中途採用では経歴や技術を重視していたりするために、異なるタイプの人が現場でチームを作ってアンマッチが起きている、というのはよくあることです。

そして、多くの企業で採用担当者と現場の責任者が異なっているため、このアンマッチ自体に気づいていなかったりします。

 

チームを形作る際に重要なのは、採用基準の一貫性を保つことです。基準がブレると、成功も失敗も資産にはなりません。その基準が「プロジェクトを成功させること」に根付いていれば、次第に強い現場を作れるのです。

 

「良い人材」=「適応力のある人材」

では、「プロジェクトを成功させるために必要な採用基準」とは何かと言うと、それは採用候補の人材に「適応力」があるかどうかを見極めることです。

 

プロジェクトは最初から最後まで、変化の連続です。プロジェクトの最初は「無」の状態から可能性を創りだしてそこから形を作り上げていくことが重要なフェーズですが、追い込みの終盤は余分な可能性を排除してまとめ上げるフェーズとなり、やることや考え方が大きく異なります。

また、プロジェクトは常に「必ず」何か重大な問題が起こるので、それにチームとして適切な対処を打っていく必要があるのです。

問題の対処の先陣を切るのはリーダーですが、当然メンバーも各自で対応しなければなりません。事態が急速に変化しているのに、それに気づかずのんびりと同じ仕事をしているようでは、プロジェクトは到底成功できません。

 

その人材に適応力があるかどうかは、こんなところに表れます。

 

「適応力のある人材」の5つのポイント

 

  1. 「ありがとう」「ごめんなさい」が言える
  2. 危機感を持って仕事をしている
  3. レスポンス(回答)が早い
  4. 安請け合いをしない
  5. 修羅場を潜ったことがある

 

1. 「ありがとう」「ごめんなさい」が言える

えーと、幼稚園や小学校の話ではありません。大人の仕事の話です。が、シビアな仕事をしていると、実はちゃんとこれを言える人は多くないことに気づきます。

コミュニケーションの中でこれが出来るのが分かるだけで、「あ、この人いいな」と思ったりするぐらいです。

 

プロジェクトに限らず、仕事というのはメッセージと成果物のやり取りによって成立するので、それを円滑に進めることがとても重要です。そして、人と人がやることなので、ミスが発生することも当然あります。

プロジェクトはそもそもルーチンワークと違って不透明なことが多いので、Aさんの仕事にミスがあっても、実はBさんの渡した情報に間違いがあった、ということはよくあります。こうしたときに、自分の責任を認めるか認めないかというのは、メンバーの信頼関係を作る上でとても重要な要素となります。

相手がすることが間違っていた時に、その責任を自分のせいにされないかどうか。これは重要なポイントです。

 

誰かを責める雰囲気があるチームでは、自分の責任を認めるのは難しいことです(だから、リーダーは安易にメンバーにプレッシャーをかけてはいけないのです)。

しかし、メンバーみんながちゃんと「ありがとう」と「ごめんなさい」を言えるチームは、複雑なコミュニケーションがちゃんと成立するので、プロジェクトが成功しやすくなります。

幼稚園や小学校で教わるようなコミュニケーションの初歩ですが、これはとても大事なことなのです。

 

2. 危機感を持って仕事をしている

「危機感を持って仕事をしている」とはどういうことかというと、自分で課題を見つけて解決する方法を模索しているか、ということです。

プロジェクトはそれ自体が大きな挑戦なので、個々のメンバーが「できるかどうか分からないこと」に対して常に努力しないと成功できません。言われたことしかやらない人、自分に与えられた仕事を達成するために自分で努力できない人はそもそもプロジェクトには向いていないのです。

 

分からないことをちゃんとググって調べているか。わからないことはわからないと言って人に訊けるか。必要なテーマについて本を買って勉強しているか。

本当に危機感を持って仕事をしているかどうかは、あるレベルを超えた人にはひと目で分かります。

 

3. レスポンスが早い

英語で “responsible” (責任感がある)という単語がありますが、これは “respond” (返答する)という単語が語源になっています。それぐらい、仕事では「回答の早さ」というのは重要な要素です。

仕事のコミュニケーションで誰かが誰かにメッセージを送った場合、その人は何かをするための情報を求めています。その情報を早く提供できるだけで、相手に信頼してもらえるようになります。

自分の都合でしか回答しない人、会話のキャッチボールが続かない人は信頼関係を作ることができないので、プロジェクトのような複雑な仕事を実行することができません。

 

「ちょっと今は手が離せないので追って回答します」や「分からないので調べて回答します」など、メッセージが伝わっていることを相手に伝えるだけでも、その相手は疑心暗鬼にならずに安心して待つことができます。

特に、メールやチャットなどのコミュニケーションでは相手がメッセージを見ているのかどうかも分からないことが多いため、こうした工夫があるかないかは大きな差になります。

これも分かっている人には当たり前のことですが、誰でもできることではないのです。

 

4. 安請け合いをしない

仕事の安請け合いをしない、というのも重要なポイントです。「あれもできます、これもできます!」とか「何でもできます!やります!」と言う人は一見仕事ができそうに思えますし、危機感を持って仕事をしそうに思えます。

しかし、安請け合いをする人で仕事ができる人はあまり見たことがありません。

 

実績が無く、これから経験を積んでいくしかない若手なら、意気込みとしてはいいのですが、仕事の安請け合いをするということは自分が何をしなければならないかが分かっていないということなので、適切なアウトプットを引き出すには教育や管理のコストがかかるということをよく認識しておく必要があります。

よく仕事の発注先を発注金額と意気込みで決める担当者がいますが、そういう人は教育や管理の難しさを理解していないため、大抵炎上して想定以上のコストがかかったりします(最初からマトモな業者に発注しておけば安く済むはずだった、というパターンです)。

自分の仕事の責任範囲を明確にできる、というのは一定の経験を積んだ能力の高い人には共通の特徴です。

 

5. 修羅場を潜ったことがある

これは中堅以上のメンバーの確認ポイントとして、修羅場を潜ったことがあるかどうかを知っておくのは重要です。この修羅場はプライベートでも大丈夫です(笑)

人の本性というのは辛い時、苦しい時にこそ現れるものなので、プロジェクトが大変なときに逃げたり人のせいにして逆ギレしたりする人がいると、大きな穴が空いてメンバー全員が大きな損害を被ることになります。

 

プロジェクトのクリティカルパス(必ずこなさなくてはならない重要なタスク)を任せるような中核メンバーを選ぶ際は、必ずこの部分を確認することをオススメします。

どんな修羅場だったか、そのときどんなことを考えて、どんな対応を取ったのか、その回答が納得できるかどうかで判断するとよいでしょう(ただし、武勇伝を語る人は要注意です)。

 

いろいろ書きましたが、これらを全て満たしている「適応力の高い人」は非常に少ないのが現実です。「適応力」について理解がある企業は少なく、適切に評価されているケースは多くはありませんが、それでも実績を出すことできるため重宝されています。

つまり、適応力が高い人はなかなか市場には出てこないのです。

もし、自分でプロジェクトを起こそうとしていて、こうした適応力が高い人が身の回りにいたら、三顧の礼をもって迎えましょう。きっと大きな力を発揮してくれるはずです。

 

また、自分が「仕事ができる人」になりたいと思ったら、上のポイントに気をつけて仕事をするとよいでしょう。なかなか細かいところに気づいて評価してくれる人は少ないですが、見ている人はちゃんと見ているものですし、そうした人に出会うものです。

 

Masayoshi Hashimoto

「フロントライン通信」編集長。業務経験は15年を超え、メディアサイトから数千万人規模の会員システムまで、10社で80件以上のプロジェクトのマネジメントを実施。2011年にスタートアップを立ち上げ、多くの人がプロジェクトをより成功できるためのツール「マンモスプロジェクト(Mammoth Project)」を開発。世界中の現場で戦うチームを応援することを人生の使命とする。

You may also like...

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。